ジョルジュ・デュブッフ社のボージョレワイン産地偽装

デュブッフ社のボジョレワイン産地偽装

フランス・ボージョレ地区最大のワイン会社であるジョルジュ・デュブッフが2004年度産ワインの産地偽装をおこなったことでフランス税関と公正取引委員会の家宅捜索と取調べを受けた。

創業者で社長のジョルジュ・デュブッフ氏は偽装があったことを認めたが、瓶詰・出荷はしていないとしている。

2006年には原料産地と品質に関する詐欺および詐欺未遂罪により、フランス共和国検察官により起訴され、裁判が開始された。

事件の概要 −仏リベラシオン紙の記事を中心に−

ボジョレの帝王 ジョルジュ・デュブッフ

ボジョレー地区最大のネゴシアンであり、ボジョレワイン輸出の75%を占める巨大ワイン会社ジョルジュ・デュブッフ社。

2004年の秋、120軒のブドウ生産農家がジョルジュ・デュブッフ社に9つのアペラシオンで生産された原料ブドウを納入した。原産地の内訳は、ボジョレ、ボジョレ・ヴィラージュ、そして7つのクリュ・ボジョレ。

原料ブドウはソーヌ・エ・ロワール県ロマネッシュにあるジョルジュ・デュブッフ社の最新醸造所に運ばれ、選果台の上を通り、アペラシオンごとに醸造するための巨大ステンレスタンク群へと運ばれる。

産地偽装は醸造所でおこなわれた

まさにここが詐欺の企てが行われた場所であった。産地の違うブドウが混ぜられ*1、クリュ・ボジョレ(指定地区産上級ボジョレワイン)となるべきブドウは下級ブドウによって水増しされた。

ボジョレ地区の2004年の収穫状況は困難をともなっていた。収穫量はすべての地区で増加していたが、収穫したブドウの品質は地区によってまちまちだった。いくつかの村ではとてもよいブドウが収穫できたが、それ以外の村では信じられないほどに「かび臭い」ブドウになった。

デュブッフ社への査察

このような状況の中、デュブッフ社は人為的に2004年産ボジョレワインを均一化しようとしたのだろうか?収穫翌年の1月13日デュブッフ社はフランス税関と公正取引委員会(DGCCRF)の査察*2を受けた。この公正取引委員会はワイン分野における偽造や詐欺摘発の調査部局でもあり、派遣された査察官はデュブッフ社のブドウ仕入れ帳簿などいたるところを調べ上げた。そして醸造タンクの内容との比較をした。この結果、デュブッフ社が指定地区上級ブドウを使わず、無印ブドウをつかって水増ししていることから査察官たちはこれが詐欺の企図であると結論付けた。

偽装された醸造タンクの中身

疑わしい醸造タンクは20本以上にも及び、このことからも今回の件がたんなる「うっかりミス」であるという仮説を限りなく弱めている。ジョルジュ・デュブッフの自己申告では、690hl(9万2000本相当)のクリュ・ボジョレ*3、1400hl(18万7000本相当)が今回の事件に関わっているという。はたして誰がこの産地偽装の責任者なのかが核心である。ジョルジュ・デュブッフ本人が決定をしておこなわれたことなのだろうか?デュブッフ本人はそのことを否定している。

産地偽装はだれの指示でおこなわれたのか

ジョルジュ・デュブッフによれば、これは醸造所責任者*4の「ミス」である。その醸造所責任者は3年前に入社し、今年の5月に解雇されている。「とても才能にあふれた醸造家ではあったが、それほど生真面目なタイプではない」というのが彼の評。

「彼が故意に産地偽装をおこなったとは言わないが、すくなくともなんらかのミス、それもかなり深刻な間違いが起こってしまった。この私、ジョルジュ・デュブッフがこのようなことに加担したことは絶対にない。」

産地偽装はどのように裁かれるのか

このような計画的かつ重大な詐欺・偽造事件は検察庁を経て地元ヴィルフランシュの検事へと送られて予備捜査がはじまる。そして犯罪が立証されれば最高2年の実刑と37500euro(約500万円)の罰金となる。もちろん立証された場合、デュブッフにとって本当のリスクは営業上のものだろう。

産地偽装が遺すもの

デュブッフ社の企業イメージ、いやボジョレワイン全体のイメージが今回の産地偽装で脅かされている。大口取引先は連日のニュースを見守り、またいくつかの取引先は発注をためらっている。また、すでに納品したワインを送り返して来た取引先もいる。「偽装したワインは出荷していないし、たしかに産地偽装の企図はあったけれども実行された部分は少なく、消費者やアペラシオンにたいして利益を侵害した事実はない」とジョルジュ・デュブッフは言う。どちらにしても捜査がすべてをあきらかにするだろう。(終)

送検から起訴へ(2005年12月12日追加)

ボージョレ・ワインの大手ジョルジュ・デュブッフ社とその醸造所責任者が「詐欺または詐欺未遂」の被告としてローヌ県地方裁判所に出頭を命じられた。起訴内容は約30万本のボージョレワインの原産地と品質にかんする詐欺。

この事件に関する検察の立件捜査は2005年8月から開始されていた。

DGCCRF(公正取引委員会)による立ち入り検査は2004年に行われ、その際にクリュ・ボージョレ(最上級ボージョレワイン)に格下であるボージョレ・ヴィラージュワインを混ぜ、AOC法(原産地呼称管理法)に違反していることが明るみにでたとのこと。

今回のワイン産地偽装事件の捜査対象ワインは、クリュ・ボジョレが690ヘクトリットル(約92,000本)とボジョレ・ビラージュ1200〜1400ヘクトリットル(約160,000〜190,000本)。

この数ヶ月間の捜査によって、醸造所責任者は容疑を認めており、2005年5月にはジョルジュ・デュブッフ社を解雇されている。

有罪が確定すれば、醸造所責任者には2年の懲役と37,500ユーロ(約525万円)の罰金、ジョルジュ・デュブッフ社へは187,500ユーロ(約2,625万円)の罰金が課せられる。

公判は2006年4月の予定。

裁判が始まった
検察は15万ユーロの罰金を求刑(2006年6月25日追加)

ワインの原料産地と品質に関する詐欺および詐欺未遂

2006年4月4日、ボジョレの首都ヴィルフランシュ・シュール・ソーヌの裁判所で、フランス共和国検察官はジョルジュ・デュブッフ社に対して15万ユーロ(約2,200万円)の罰金刑を求刑した。

2005年の収穫前に発覚したデュブッフ社の産地偽装スキャンダルは、その舞台を裁判所に移して、法人であるジョルジュ・デュブッフ社および産地偽装をした原料ブドウでワインを製造した醸造所長への刑事訴追という形であらたな幕が開いた。

醸造所長は執行猶予付き実刑

ローヌ県ランシエの醸造所長だったシルヴァン・ドリーは、検察官に6ヵ月の懲役刑(執行猶予付き)と4万ユーロ(約600万円)の罰金刑を求刑された。

この前醸造所長シルヴァン・ドリーは約3年間にわたりランシエのデュブッフ社醸造所で責任者をつとめていた。そして2004年の秋にワインラベルと異なる産地のブドウを発酵タンクのなかに投げ込んだかどで訴追されている。容疑は醸造家として最も忌まわしい「ワインの原料産地と品質に関する詐欺および詐欺未遂」である。判決は7月4日に下される。

三ッ星シェフも見守る

地域最大のワイン会社であるジョルジュ・デュブッフ社の今回の裁判は業界関係者であれば無関心ではいられない。裁判所にはブドウ栽培者なども押しかけ、そのなかにはピエール・トロワグロやポール・ボキューズといった三ッ星シェフの姿もあった。

あきらかにされた偽装方法

取調べのなかでどのような原料産地偽装が行なわれたのかが明らかになってきた。2004年のジュリエナ地区産のブドウのある部分はそのままジュリエナAOCワインとして醸造されたが、サンタムールやモルゴンなどといった他の産地のワインとしても醸造された。このことはDGCCRF(消費と競争および贋物取締局:日本における公正取引委員会に相当)が裁判所に提出したリポートの中にも記述があり、INAO(国立原産地呼称管理局)は「ショックなことだ」とコメントした。

弁護側の証人

デュブッフ社弁護側の証人として登場したのがジャーナリストのベルナール・ピヴォ。「わたしの友人であるジョルジュ・デュブッフが詐欺師だなんてことはありえない」「かれが無罪であると確信している」

ベルナール・ピヴォはボジョレ出身のフランスの著名ジャーナリスト。(Wikipediaのベルナール・ピヴォの記事

ちなみに彼の兄弟はボージョレの小規模ワイン生産者である。

顔を伏せる醸造所長

シルヴァン・ドリーは裁判の間ずっと顔を伏せたままだった。何が彼に産地偽装を行なわせたのか。ひとつの理由は2004年という大変難しいヴィンテージだった。雨がたくさん降ったことや、収穫量が予想以上に上昇してしまったことが産地偽装を彼に行なわせた外的要因だった。

もうひとつ彼があげたのが過酷な労働環境だった。「仕事が終わるのは朝の5時、6時だった。」蓄積した疲労のせいで正常な判断ができず、ミスを犯してしまったと彼はいう。「決して詐欺を働こうとしたわけじゃない。」“品質上の不安”が異なった産地のブドウを混ぜて醸造してしまった原因だと彼は振り返った。

そして判決へ

(準備中)

メディアでの報道とリンク

インターネットでの報道 2005年8月24日ヤフー・フランスhttp://fr.news.yahoo.com/050824/202/4jvzv.html
2005年12月12日現在削除されています。

フランス全国紙での報道 2005年8月27日リベラシオン紙
http://www.liberation.fr/page.php?Article=319511
ページ画像はこちら(クリックして拡大)

英国での報道 2005年8月27日ロイター
http://go.reuters.co.uk/newsArticle.jhtml?type=topNews&storyID=840113§ion=news&src=rss/uk/topNews
2005年12月12日現在削除されています。

日本での報道 2005年8月30日読売
http://www.yomiuri.co.jp/gourmet/drink
/wnews/20050830gr0d.htm

→2005年9月5日時点でヨミウリオンラインの記事リストからこの記事は削除されています。グーグルによるキャッシュはこちら
→2005年11月1日時点でグーグルのキャッシュも削除されています。

以下に削除された記事を転載します

ジョルジュ・デュブッフ社、ブレンドミスで取り調べ
  フランス・ボージョレの帝王が率いるジョルジュ・デュブッフ社が低いレンジのワインを高いレンジのキュヴェに混ぜたとして、当局の取り調べを受けている。   問題になったのは30万本分に相当する2004年のビン詰め前のワイン。 ボージョレ地区全体から収穫されるブドウで造られる「ボージョレ」を、特定の村のブドウで造られる「ボージョレ・ヴィラージュ」などの上級ワインに混ぜたとして、当局に指摘された。 社長のデュブッフ氏は「ブレンドミス」を認めており、「既に辞職した1人の社員が独自に行った」としている。問題のワインはビン詰めされていないため、市場に出ておらず、消費者への影響はないという。   今回の問題は定期的な調査で明らかになった。同社はフランスのボージョレ輸出量の75%を占める大手。
(2005年8月30日 読売新聞)

産地の違うブドウが混ぜられ*1
読売新聞記事では「低いレンジのワインを高いレンジのキュヴェに混ぜた」ことで「ブレンドミス」という表現がなされているが、リベラシオン紙によれば混ぜたのはワインではなく原料ブドウである。これはブレンド(異なる品種、畑、ビンテージのワインを品質向上を目的としておこなう醸造上の技術)とはいえず、原料ブドウの産地偽装と言わざるをえない。また、ミスとあるが今回の事件は事故ではなく水増しする(completes)意図をもっておこなわれた。

査察*2
読売記事によれば、今回の査察は「定期的な調査」とされているが、9月9日付けLa Journee Vinicoleのジョルジュ・デュブッフ社長インタビューによれば税関と公正取引委員会による抜き打ち査察(faire un controle inopine)であったとある。またこの日はINAOがまったくの偶然にサンプル収集のために訪問していた。

クリュ・ボジョレ*3
読売記事では触れられていないが、クリュ・ボジョレ(指定地区産上級ボジョレワイン)をも下級原料で水増ししていたことが明らかになっており、デュブッフ社長のインタビューでもこれを認めている。

醸造所責任者*4
読売記事によれば「1人の社員が独自に行った」とあるが、3年前から勤務する醸造所責任者である。